ピッピ 船にのる|自由に、楽しく、気楽に!

ピッピ,船にのる岩波少年文庫
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学校でも、お祭りでも、ピッピが顔を出すと、いつもゆかいな大さわぎがおこります。ある日、行方不明だったピッピの父エフライム船長がごたごた荘に帰ってきて、二人は感激の再会をしました。世界一強い女の子ピッピの第2話。

リンドグレーン(2000)『長くつ下のピッピ』(大塚勇三)裏表紙 岩波書店

今回紹介するのは『ピッピ 船にのる』。

1946年にスウェーデンの作家リンドグレーンによって書かれ、1965年に大塚勇三によって翻訳されました。

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【どんな本?】
天真爛漫で力持ちな女の子ピッピの物語。『長くつ下のピッピ』の続編。

【こんな人にオススメ】
・明るい気分になりたい人
・子ども時代の気持ちを思い出したい人
・スカッとしたい人

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『ピッピ 船にのる』のあらすじ、内容

ピッピはスウェーデンにある小さな町の「ごたごた荘」に一人で住んでいる女の子。

相棒で猿のニルソン氏、ベランダで飼われている馬、近所に住む兄妹トミーアンニカと毎日楽しく過ごしています。

 

町に買い物にいけば、お菓子やおもちゃを爆買い。

遠足では森の中で怪獣になって大暴れ。

市では様々な露店やアトラクションに興味津々。

どこに行ってもピッピは元気いっぱいです。

 

そんなある日のこと。

行方不明だったピッピの父親がごたごた荘にやってきます。

再会を喜ぶピッピは、すぐに父親と一緒に行くことを決めました。

出発の前日には盛大なお別れパーティが開かれます。

しかし、トミーとアンニカは浮かない顔をしていました……。

『ピッピ 船にのる』で印象に残った箇所

『ピッピ 船にのる』で印象に残った箇所は3つあります。

①ピッピの動物好きで涙もろい一面
②意外とエンターテイナー気質なピッピ
③寂しい別れと対称に、景色はあまりに美しく

順に詳しく説明していきましょう。

①ピッピの動物好きで涙もろい一面

目が赤いって?……わたしが?よしてよ。こんなちっちゃなばかな鳥のことで、わたしが泣くなんて、おもわないでよ!(大塚 2000: 79)

ピッピは子どもたちと怪物ごっこをしている時、巣から落ちて死んだひな鳥を見つけます。

遊びを中断してひな鳥を拾い上げたピッピの目は赤くなっていました。

わたしに力がありさえしたら、もういちど、生きかえらしてやるんだけど。(大塚 2000: 79)

いつもすべてが本音ですべてが本音でないようなピッピですが、このシーンでは素直な気持ちが出ているように感じました。

②意外とエンターテイナー気質なピッピ

自由奔放でやりたい放題やっているように見えるピッピですが、周りの人を楽しませるための努力には余念がありません。

遠足でクラスメイト相手に怪物役を演じたり、庭の木にこっそりレモネードを設置しておいたり。

お菓子やおもちゃを爆買いしたのも、最初から街の子どもたちに配ることを考えての行為だったようにも見えます。

ええ、もちろん、木はのこっているでしょう。でもアンニカは、ピッピがいってしまったら、レモネードはなりっこないと、はっきり感じていました。(大塚 2000: 204)

きわめつけはトミーとアンニカをつれての難破ごっこです。

・前日から一人で船の修理
・食料やキャンプ道具一式の準備
・テント設営、寝床作り、火おこし、調理などの雑務
・トークによる雰囲気作り
・最終日にボートを隠して遭難を演出

大人目線になってしまいますが、ピッピが安全に配慮しながら二人の保護者をしていることが分かります。

もちろん、ピッピ自身が楽しんでいることは間違いないのですが、楽しみつつも楽しませること、安全に帰ることをしっかり計算していることに、ピッピの意外な面倒見の良さとエンターテイナー気質なところを感じました。

③寂しい別れと対称に、景色はあまりに美しく

ピッピがおわかれパーティーをした夕方のことを、トミーとアンニカは、けっしてわすれないでしょう。それは、「ああ、これこそ夏なんだ!」と、おもわずひとりごとをいうような、すばらしくあたたかな、うつくしい夏の夕方でした。

ピッピの庭の、あらゆるバラは、夕やみのうちにかがやきわたり、いいかおりをおくっていました。年をとった木々は、ザワザワと、秘密めかした声をたてていました。なにもかも、ほんとはすてきなはずなのです。もし、あのことさえ……もし、あのことさえ……!トミーとアンニカは、それ以上は、かんがえたくありませんでした。(大塚 2000: 191-192)

明日はピッピとお別れという寂しくて悲しい時、皮肉にも夕方の庭はキラキラと輝いていました。

景色の美しさを描写すればするほど、トミーとアンニカの寂しさは際立ちます。

この景色はピッピとの別れを信じたくない二人が、意識を庭に集中させたことで見えた美しさなのでしょう。

『ピッピ 船にのる』の感想

①この巻からでも読める

1つ目のエピソードは「ごたごた荘」を訪れた旅人の目線で話が進みます。

ピッピがどんな子なのか、どんな環境にいて、どんな友達がいるのかが自然な形で紹介されていくので、旅人のように初めてピッピに出会う人でもここから続きを読むことができます。

 

さらに言うと、巻末の「訳者のことば」で前作のあらましが丁寧にまとめられています。

これを読んでから本編に入れば、話やキャラがわからないということはまずありません。

この本をよむかたは、おそらくまえに出た『長くつ下のピッピ』を、よんでいることでしょう。もし、この本から、よみはじめるとしても、主人公のピッピがどんな子か、十分けんとうがつくと思います。でも、はじめてピッピの本をよむかたのために、世界一つよい女の子が、最初に登場する『長くつ下のピッピ』のあらましを、念のためここに紹介しておきます。(大塚 2000: 191-192)

②イベント系の話が多くて賑やか

学校、町、市、森、無人島(!?)。

ピッピがいれば何でもない日常も賑やかになりますが、今作は舞台にも特別感があるので、自分もお祭りや遠足に行ってるようなスペシャルな気分になりました。

個人的によかったのは保護者としてのピッピが見られる遭難回。

それと父親が登場してからの、トミーとアンニカの心理描写です。

③ウソをつくのはよくない……?

ピッピは、ほんとうにうそをついてるんじゃない。じぶんのおもいついたことを、うそみたいにしゃべってるだけさ。こんなの、わからないとは、おばかさんだぜ!(大塚 2000: 184)

ピッピに「ウソをつくのはいけない」と言うアンニカ。

それに対してトミーは核心をつくような反論をしてピッピを感心させています。

ウソといえばウソですが、そこに嫌らしさを感じさせないのがピッピです。

 

現実でも、場を盛り上げるために大げさにいったり、楽しませるためにホラを吹いたりする人はいますよね。

そこに嫌らしさが出ないのは、悪意や打算がないからだと思います。

ピッピのウソもそれと同じで、トミーはそのことを分かっていたのです。

まとめ

有名作品の続編は往々にして失速しがちですが、ピッピに関してはいらぬ心配でした。

ピッピのキャラクターを深堀しつつ、物語にもドラマチックな展開があり、読み応えがありました。

世界一つよい女の子の最強の武器は、お金でも腕力でもなく、想像力と柔軟性だと実感。

そして、その2つは誰でもいつでも、手に入れようと思えば手に入れられるんですよね。

せわしない日常に追われていると、そこに意識が向かなくなってしまうのが難しいところ。

自由に、楽しく、気楽に!

また忘れてた、ありがとう、ピッピ。

 

ところで。

ピッピの世界観にハマって色々調べていると、2018年にピッピ展が開かれていたことを知りました。

行きたかったー!

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