古事記と昔話の共通点、類似点の多さについて考えた

岩波少年文庫
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古事記物語』を読みました。

著者は福永武彦さん、発売は1957年、2000年に改訂、発売は岩波書店から。

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内容/あらすじとか

「古事記」は、8世紀にわが国でいちばん初めに書かれた書物です。スサノオノミコトの大蛇退治、イナバの白ウサギ、海幸と山幸、ヤマトタケルノミコトの冒険など、日本民族の息吹きをいきいきと伝える神話が、大らかに語られます。

福永武彦(2000)『古事記物語』裏表紙 岩波書店

『古事記物語』の感想/レビュー

古事記の世界観、ストーリー、キャラクターの素晴らしさは言うまでもありません。読むたびに何かしらの発見があるものですが、今回『古事記物語』を読んで改めて思ったのは昔話に類似したシーンが非常に多かったことです。

ぱっと思い出せるままに挙げただけでも以下の通り。

  • イザナギが黄泉の国で「見てはいけない」という約束を守れなかった ⇛ 「鶴の恩返し」など「絶対見るなよ」系の話
  • イザナギが地上へ逃げるときにツル、クシ、モモを使って時間稼ぎをした ⇛ 「三枚のお札」など
  • スサノオが川の上流から流れてきた箸を拾い、上流に人が住んでいることに気づいた ⇛ 「迷い家」など、上流から椀や箸が流れてくる話は多数
  • オオクニヌシと因幡の白兎 ⇛ 末弟が出世、成功する昔話は世界的に多い
  • オオクニヌシがスサノオから逃げるくだり ⇛ 「ジャックと豆の木」
  • 海幸彦と山幸彦の話 ⇛ 海底の宮殿が「浦島太郎」の龍宮城を連想させる
  • 山幸彦とトヨタマヒメの結婚、出産のくだり ⇛ 異類婚&ここでも「見るなの禁」破り
  • 蛇の姿をしたオオモノヌシと結婚した女 ⇛ 異類婚、昔話には「蛇婿入り」というジャンルがある

これだけでも古事記と昔話に共通点が多いことがわかると思います。もちろん自分が見落としていたり、類似の話を知らなくて気付いてないところもあるはずなので、それらの関係性に注目するだけでも面白い読み方ができそうです。

「それじゃあ古事記は昔話の原型なのか」と思えますが、そう簡単な話でもありません。というのも、古事記の編纂は歴史だけでなく、当時地方に伝わっていた伝説や民話なども参考にしているからです。その意味では「各地に伝わる昔話が先にあって、古事記はその型を物語に反映させた」と考える方が自然かもしれません。各地で人気のある話や、似ている話のパターンを抽出して…という風に個々のエピソードを作っていったのではないでしょうか。

 

もう一つ興味深いのは、「ジャックと豆の木」を連想させるくだりがあったことです。似ている点はジャックが巨人の城から逃げるときにハープが鳴ってしまい巨人が起きてしまうところと、オオクニヌシがスサノオから逃げるときに琴が鳴ってしまいスサノオが起きるところ。「相手が寝ている隙に逃げ出してついでに楽器を拝借、誤って楽器を鳴らしてしまい相手が目覚める」。展開が似ているのはたまたまの偶然なのでしょうか。

「ジャックと豆の木」の舞台は9世紀中頃のイングランド、アルフレッド大王の時代とされています。対して古事記が編纂されたのは8世紀。それだけ見ると古事記の方が古いように思われますが、9世紀が舞台の「ジャックと豆の木」は後世に再編された設定。英国王立協会が発表した研究によると、「ジャックと豆の木」にはルーツとなる別の物語があり、その起源は約5000年前まで遡るかもしれないそうです(参考:Phylogenetic analyses suggests fairy tales are much older than thought)。

ついでに、イザナギが黄泉の国から逃げる際に持ち物や果物を投げて追手を妨害するのは、「三枚のお札」とそっくり同じ。この「投げた物が別の何かに変化して追手の追跡を妨げる」型は「呪的逃走」といわれ、日本固有のものでなく世界中の神話や伝承に見られる逃走パターンの一つだそうです。

 

次にこの本自体のレビュー。少年少女向けの文章、物語をラストまでカバーしてるという点で古事記導入本としておすすめです。ただ文章は小学生には難しいかもしれないので、どちらかといえば中高生向け。

古事記は後半から特に歌がよく出てくるようになります。物語が盛り上がったり、象徴的な出来事のタイミングで歌が入り、人物のやりとりも歌で行われたりもします。本書では現代語訳の詩になおされていますが、原文に出てくるほとんどの歌謡が収録されているのは特筆すべき点です。個人的に印象に残っているのはスサノオが詠んだ歌。

八雲立やくもた出雲八重垣妻籠いづもやえがきつまごみ八重垣作やえがきつくるその八重垣やえがきを」

八重垣の圧とリフレイン、声に出して読んだときの語感の良さが圧倒的です。

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