砂糖の世界史|あらゆる人々を巻き込んで、世界を変えた白い粉

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茶や綿織物とならぶ「世界商品」砂糖。この、甘くて白くて誰もが好むひとつのモノにスポットをあて、近代史の流れをダイナミックに描く。大航海時代、植民地、プランテーション、奴隷制度、三角貿易、産業革命ー教科書に出てくる用語が相互につながって、いきいきと動き出す。世界史を学ぶ人は必読。

川北稔 (2001) 『砂糖の世界史』裏表紙 岩波書店

今回紹介するのは『砂糖の世界史』。

著者は歴史学者の川北稔かわきたみのるさん、1996年に岩波書店から発売されました。

【どんな本?】
「砂糖」を通して近代史(大航海時代~産業革命後が主)を学べる本。

【こんな人にオススメ】
・世界史を学ぶ高校生
・歴史を学びなおしたい社会人
・物事を様々な角度から眺められるようになりたい人

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『砂糖の世界史』のあらすじ、内容

万国すべての人が好み、地域を選ばず広く取引されるモノを「世界商品」といいます。

16世紀以降、世界商品を牛耳るためヨーロッパの国々はこぞって海外に進出しました。

アジア、アフリカ、アメリカに、世界商品になりうる資源が多くあったからです(銀、タバコ、香料、染料、茶、コーヒー、ゴムなど)。

そんな中で世界を大きく動かした世界商品の一つが「砂糖」です。

 

本書では「砂糖」を通して近代の世界史を見ていきます。

砂糖により利益を得た人々と、砂糖のために被害を被った人々。

砂糖により生まれた文化と、砂糖のために行われた政治。

その影響は現代にも根強く残っていて、砂糖が人・モノ・お金をどのように動かしてきたのか、ワールドワイドな視点から解説されていきます。

『砂糖の世界史』で印象に残った箇所

『砂糖の世界史』で印象に残った箇所は3つあります。

①砂糖がすべてを変えてしまった
②砂糖の利益を巡り世界がひとつながりになった
③「世界商品」を見ることで世界史の動向がわかる

順に詳しく説明していきましょう。

①砂糖がすべてを変えてしまった

こうして、カリブ海の島々は、遅かれ早かれ、その風景も、そこに住む人間の構成も、社会構造も、経済のあり方も、いずれもが、砂糖きびの導入とともに、つぎつぎと一変してしまったのです。ぱらぱらとしか人の住まなかった島でも、砂糖きびのプランテーションが展開すると、何万人というアフリカからの黒人奴隷が住むようになりました。このようなひとつづきの変化を、歴史家は「砂糖革命」とよんでいます。(川北 1996: 42)

他の作物を作らずに、商品として世界市場に売るものだけを作る経済農業を「モノカルチャー」と言います。

代表例はカリブ海の砂糖、アメリカ南部の綿花、コーヒー豆、セイロン(スリランカ)のお茶、インドネシアのゴムの木など。

カリブ海では元いた民族が淘汰され、黒人奴隷を使った大規模農業(プランテーション)が展開されました。

②砂糖の利益を巡り、世界がひとつながりになった

「お茶に砂糖を入れる」という破天荒な思いつきは、このような幸福な立場に立ったイギリス人にしかできなかったことなのです。それは、イギリス独特の生活文化になりましたが、その陰には、無数のアフリカ人奴隷とアジアの貧しい農民たちの、涙と汗の労働があったことを忘れるわけにはいきません。(川北 1996: 90)

17~18世紀頃イギリスに入ったお茶とコーヒーは、砂糖と合わさることで広く一般に普及しました。

また身分ごとに制約されていた贅沢が解禁され、庶民が上流階級を真似るようになったことも、砂糖普及に一役買っています。

イギリスにお茶と砂糖が東西から集まり、アメリカには砂糖を作るため黒人奴隷が集められ、世界は砂糖を軸にして動いていたのです。

③「世界商品」を見ることで世界史の動向がわかる

小麦やコメのような基本的な食糧や基本的な衣料もありましょうし、もっと新しい時代なら、石油や自動車のような商品をつうじてでも、その生産から消費までの全体を注意深く見通すことによって、世界の歴史の動向がわかるはずです。(川北 1996: 202)

砂糖は主にカリブ海で生産されましたが、労働力の黒人奴隷はアフリカから連れてこられ、流通した砂糖の大半はヨーロッパで消費されていました。

つまり砂糖の歴史を理解するには、三つの大陸を同時に見なければいけないのです。

このように特定の商品(モノ)の生産から消費を注意深く見ることで、世界各地の人々の生活の実態や、世界的なつながりを理解することができます。

『砂糖の世界史』の感想

①歴史の流れを理解しやすい

ピューリタン革命、七年戦争、プランテーション、印紙法、ボストン茶会事件など。

学生時代に教科書で習った知識は、ぶつ切りのワードとして頭の片隅に残っていました。

そこに「砂糖」という座標軸が加わることで、前後の繋がりや関係性がはじめて見えてきた気がします。

堅苦しい感じもなく興味深く読み進められるので、世界史を学ぶ学生には特にオススメです。

②歴史を学ぶうえでのスタンスが参考になる

学生時代の授業が詰め込みになるのは仕方ないとは思いますが、年号や出来事を追っているだけでは分からない歴史を学ぶ面白さが本書にはあります。

一つの出来事について因果関係を詳しく探ったり、キーとなった世界商品を色んな角度から見ることは、趣味を深堀りしているような感覚がありました。

何でもそうですが、表層をざっくりなぞるよりも深く勉強した方が面白いですね。

③すべての物事にはそこに至るまでの変遷がある

現代、日本でもいたるところに存在しているコーヒー・ハウス(喫茶店)。

紅茶やコーヒーに入れる砂糖。

そういった当たり前がなぜ当たり前になっているのか、いつから始まったのか。

ちょっぴり優雅でのほほんとした文化の背景に、様々な思惑や多くの犠牲があったことに驚かされました。

砂糖の歴史はただの昔話ではなく、姿かたちを変えたり変えなかったりしながら、現代と地続きで繋がっていたのです。

砂糖のようにあらゆる物事を変えてしまったモノとして、現代ではスマホなんかを挙げられそうですね。

まとめ

バラバラに思えた歴史上の出来事に一つまみ砂糖を加えただけで、ここまでピタリと話が繋がるのかと舌を巻きました。

権威の象徴や万能薬として重宝され、美味しさや金儲けのために求められ、大量生産のために何でもやり、そのおかげで新たな文化が生まれたり政治が動いた。

「風が吹けば桶屋が儲かる」のような話ですが、砂糖には方々へ様々な影響を与える魅力とパワーがあったのです。

歴史を広い視点から見て繋がりを考える方法は、身近な生活の中で考えを組み立てたり、色んな角度から物事を見るのに役立つと思いました。

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