岩波ジュニア新書の『10代の悩みに効くマンガ、あります!』を読みました。
著者のトミヤマユキコ氏はライターであり、マンガ研究者。
早稲田大学文化構想学部の助教授を経て、東北芸術工科大学の准教授をしているそうです。
本の内容は、
- 人間関係、進路、将来、見た目、性など、思春期にありがちな悩みにヒントをくれるようなマンガを紹介していく
って感じになっています。
タイトルには10代とありますが、10代で自分に向き合わずに諸々を引きずり続けている青春ゾンビの自分には、非常に興味深い内容でした。
楽しいことも多い10代。他方で、友達や親との関係にモヤモヤしたり、進路や将来をあれこれ考えたり、見た目やSNSに神経を使ったり……と、けっこう大変! そんな10代を、多種多様なマンガを通してお助けします。読めばすべて解決!とはいかなくても、気がつけば縮こまったこころとからだがふわっと軽くなる一冊。
トミヤマユキコ(2023)『10代の悩みに効くマンガ、あります!』裏表紙 岩波書店
『10代の悩みに効くマンガ、あります!』で印象に残った箇所
本書で印象に残ったポイントは以下の通りです。
- まず目指すのは「努力家」になること
- 将来はすぐに決めなくていい
- 慌てない、焦らない、決めつけない、しつこく考え続ける
①まず目指すのは「努力家」になること
特別な存在なんてふつうのひとには無理だからやめておいた方がいいと言いたいのではないのです。でも、特別な存在になるために努力が必要なのは間違いないですよね。ひょっとすると才能より努力の方が大事なんじゃないかなと思うくらいです。炭治郎だって、休むのは怪我をしたときくらいで、あとはずっと訓練と実践の日々ですから。だとすれば、特別な存在になりたいひとがまず目指すべきは、努力家になることなのではないでしょうか。(トミヤマ 2023: 55)
「将来が決められない時」の『鬼滅の刃』の紹介より。
方々で言われ続け、その重要性も理解しているつもりだけど、なかなか実行に移せないのが努力というもの。
良書や良縁に発奮、努力家になろうと決めるけど三日後には元通り、が大多数の人ではないでしょうか。
つまり、努力の難しさは瞬間的なところではなく、継続するところにあるのだと思います。
剣豪・宮本武蔵の言葉に「千日(せんじつ)の稽古をもって鍛となし、 万日(まんじつ)の稽古をもって錬となす」なんてものがあれば、
ジャーナリストの辰濃和男さんは『文章のみがき方』の中で、「渾身の力とは瞬発的なものだけでなく、持続的なものでもある」と述べています。
もし自分が「努力」をテーマに漫画を選ぶなら、曽田正人の『昴』(バレエ)、石塚真一の『BLUE GIANT
』(ジャズ)、藤子不二雄Ⓐの『まんが道
』をオススメします。

②将来はすぐに決められなくていい
ここまで読んでくださったみなさんは、すでにお気づきかと思いますが、わたしは「将来がすぐに決められなくてもなんとかなるよ」と言いたいタイプの人間です。まあ、すぐに決められたら幸せなことですが、決まらないことも多いじゃないですか。あとは、決めていたんだけど、挫折したり、急な進路変更を迫られる場合もありますよね。(トミヤマ 2023: 60)
「将来が決められない時」の『逃げるは恥だが役に立つ』の紹介より。
曖昧なことやよく分からないことって、とにかく気持ち悪くて不安ですよね。
どれだけ変化を嫌おうと、社会は変化し続けるし、人生も変化の連続です。
だから、予測不可能な変化前提の世界で「自分の将来はこう!」と決めてしまうのは、非常に危ういことではないでしょうか。
自分が「変化」をテーマにおすすめの漫画を選ぶなら、いわしげ孝の『ジパング少年』、土田世紀の『編集王
』、天野こずえの『ARIA
』を挙げます。
③慌てない、焦らない、決めつけない、しつこく考え続ける
慌てない、焦らない、決めつけない、しつこく考え続ける。その先に、自分はこういう人間だという「答えらしきもの」が見えてきます。しかしそれは、ガチガチに固定されたものではありません。(トミヤマ 2023: 198)
「性的なことがわからない時」の『性別「モナリザ」の君へ。』の紹介より。
慌てない、焦らない、決めつけない、しつこく考え続ける、なんて素晴らしい言葉でしょう。
これは「すぐに答えを出さなくてもいい」という考え方に通じるスタンスですね。
ただ、すぐに答えを出さないのは、考えなくていいということではありません。
筆者が推奨しているのは問題を先送りにするのではなく、悩み考え続けてその都度、暫定的に答えっぽいものを出していくことだと思います。
自分自身、スポーツを通してこれを感じることがよくありました。
具体的に言うと、技術向上のためにあれこれ考えて、これが最適解だと思っても、いざ実戦で試すと完璧ではないんですね。
仮説⇒実践⇒改善をひたすら繰り返して、今度こそ答えが見つかったと思っても、扉を開ければ当たり前のように次のステージや課題が見えてくるのです。
やもすれば、どうすればいいのかさっぱり分からなくなってしまったり、全く異なる問題が浮き彫りになったりすることもありました。
だから、「確固たる何か」や「究極のパフォーマンス」のような、具体的な答えがあると思いこんで進むと、いつまで経っても先が見えずに心が折れてしまう危険性があるのです。
たぶん、人生で起こることや悩みのほとんどには決まった答えがないので、考えまくって自分が納得のいく形を暫定的に出していくしかないんだと思います。
今の自分にハッキリした答えが出せなくても、後から急に閃いたり、思わぬところで点がつながって納得できたりするかもしれないじゃないですか。
その瞬間を掴むために、ずっとモヤモヤしたり考え続けたりするのはしんどいこと。
だけど、問題を先送りにしたり、安易に出した答えに逃げるように飛びつくと、後々になってもっとしんどくて面倒なことになりかねません。
『10代の悩みに効くマンガ、あります!』の感想
悩みの種類に応じてオススメのマンガを紹介する。
色んなジャンルの色んなマンガにワクワクしながら、自分なら何をオススメしようかと考えながら読んでいきました。
「イケてる人になりたいのになれない時」で紹介されていた『服を着るならこんなふうに』は、義務教育に組み込んで欲しいくらいの実用本。
自分はこの作品にかなり勉強させてもらっていて、まじで10代の、中学生くらいの時に読んでおきたかったと心の底から思っています。
学校の図書室に本書と、本書で紹介されたマンガが、悩み別にカテゴライズして並んでたりすれば最高なんですが…。
最後に、自分が「10代の自分」を助けるべく、マルチビタミン的な総合薬として送り届けたい作品は、とりあえず以下の通りです。
みなさんの処方箋も、ぜひコメントで教えて下さい!
コメント