バカと無知 人間、この不都合な生きもの|人間の本性に迫る背徳感と知的興奮

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新潮新書の『バカと無知』を読みました。

著者の橘玲たちばなあきら氏は編集者を経て作家になった方。

小説、評論、投資術など幅広い分野で執筆しつつ、各種メディアへの寄稿や自身のブログ、Twitterでも情報発信しています。

 

本書の内容は、

  • 遺伝学や進化心理学の観点から、人の本性を示唆するような実験や研究などを紹介する

って感じになっています。

もっと砕いて言うと、学校や会社などにいるやばい人、理不尽なこと、暗黙に存在してる風潮やきれいごとを、科学的に解明していく本になります。

正義のウラに潜む快感、善意の名を借りた他人へのマウンティング、差別、偏見、記憶……人間というのは、ものすごくやっかいな存在だが、希望がないわけではない。一人でも多くの人が「人間の本性=バカと無知の壁」に気づき、自らの言動に多少の注意を払うようになれば、もう少し生きやすい世の中になるのではないだろうか。科学的知見から、「きれいごと社会」の残酷すぎる真実を解き明かす最新作。

橘玲(2022)『バカと無知 人間、この不都合な生きもの』カバー袖 新潮社

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『バカと無知 人間、この不都合な生きもの』で印象に残った箇所

『バカと無知』で印象に残った箇所は以下の通り。

  • バカはバカだから自分がバカだと気付けない
  • 自尊心を高めても幸福になれるわけではない
  • 人は見たいものだけ見て、聞きたいことだけ聞く

①バカはバカだから自分がバカだと気付けない

「バカはの問題は、自分がバカであることに気づいていないことだ」

自分の能力についての客観的な事実を提示されても、バカはその事実を正しく理解できないので(なぜならバカだから)自分の評価を修正しないばかりか、ますます自分の能力に自信をもつようになる。まさに「バカにつける薬はない」のだ。

ここまで読んで、あなたは「バカってどうしようもないなあ」と嗤ったにちがいない。だがダニング=クルーガー効果では、バカは原理的に自分がバカだと知ることはできない。私も、そしてあなたも。(橘 2022: 47)

バカという言葉が飛び交う不穏な章。

バカは自分でバカと気付けないから直しようがないというのは、残酷な話です。

とはいえ、自分で気付けないという以上、まったくもって他人事ではありません。

 

同じ章でもう一つ面白いと思ったのは、能力の高い人は自己評価が低い傾向にあったという研究結果です。

それに関しては、旧石器時代から何百万年も続いた、共同体での生存戦略の名残なのではないかという見方があるそうです。

共同体の中では能力の高い人が権力を持つ。
能力が低いことがバレるのは不利なので、自分の能力を高く見積もるようになる。
能力が高いことがバレるのも不利なので、極端に目立たないように自分を過小評価した。

これが真実なのかは分かりませんが、人の脳が旧石器時代からほとんど変化していないことを考えると、ありえない話ではないと思いました。

②自尊心を高めても幸福になれるわけではない

「自尊心が高いと幸福度も高い」は、大量の研究によって実証されている。だがこれは、「自尊心を高めれば幸福になれる」のではなく、「幸福だと自尊心(自己肯定感)も高くなる」という逆の因果関係のようだ。(橘 2022: 128)

自尊心は原因ではなく結果だった!

幸福になりたいなら自尊心を上げようとするより、普通に人生を頑張った方がいいようです。

そのためには、自分にとっての幸福を定義して、幸福になるために何がどれくらい必要かを検討。

そこに向かう作業を淡々とこなしていくしかないのでしょう。

 

これは「自尊心を無理に高めようとしなくていい」という意味で、自尊心の低い人には朗報かもしれません。

ただ、自分がどうなれば幸福を感じるのか分からなければ、何をどう頑張ればいいのかも分からないまま。

自分にとっての本当の幸いを考えることは、避けて通れない最低限のハードルになりそうです。

③人は見たいものだけ見て、聞きたいことだけ聞く

ひとはステイタス=自尊心を守るためなら死に物狂いになるから、いくらでも自分を正当化する理屈を思いつく。これが「見たいものだけを見て、聞きたいことだけを聞く」ことで、ジュリアス・シーザーの時代から人間のこうした本性は知られていた。(橘 2022: 280-281)

進化心理学では、知能の目的は自己正当化だとされているそうです。

つまり、自分の主張に一貫性をもたせるため、自分に都合のいい情報を集めたり、都合のいい意見だけに耳を傾ける。

養老孟司さんが『バカの壁』で書いていた、「バカの壁」のことです。

バカの壁|バカはなぜバカなのか?
イタズラ小僧と父親、イスラム原理主義者と米国、若者と老人は、なぜ互いに話が通じないのか。そこに「バカの壁」が立ちはだかっているからである。いつの間にか私たちは様々な「壁」に囲まれている。それを知ることで気が楽になる。世界の見方が分かってくる...

こういう状態になっている時は、それを自覚するのが難しいことが問題だと思います。

だから、

  • 意見を持つ時は反対意見もセットで考える
  • 自分以外の様々な年齢/性別/立場の人の意見、考えに目を通す
  • 物事を善悪・正誤で決めつけない

なんて風に、自分の中での思考のルールがあってもいいかもしれませんね。

 

ただこうしてルールを決めたところで、瞬間的なコミュニケーションの場で実践できるか、といった問題はありそうです。

そもそも、自分の見たいもの聞きたいものだけ見聞きする状態になってしまっていると、そのルールの存在すら、頭の外へ追い出されてしまうかもしれません。

『バカと無知 人間、この不都合な生きもの』の感想

公の場、お利口な場では言いにくいような部分にズバズバ切り込んでいく。

科学的なデータや論文で示唆された「人間の本性」に迫っていくので、背徳感と知的興奮のある読書体験でした。

印象に残った箇所以外にも、印象に残った箇所がたくさんあり(矛盾)、

  • 美男美女は幸福じゃない?
  • 集団決定の場からバカを排除するべき?
  • 愛は差別感情?
  • ベンツに乗ると一時停止しなくなる?
  • 赤ちゃんは生まれながらにして〇〇主義者?
  • 偏見を持つなという教育が偏見を強めてしまう?

などなど、思わず人に話したくなるような話題がてんこ盛りです。

がーっと読んで、気になった話題を友だちに紹介して、意見を交換し合えば楽しそうです。

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