『まんが日本昔ばなし』プロデューサーの紀行文を読んで文化を守る意味を考えた話

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「まんが日本昔ばなし」今むかし』を読みました。

著者は川内彩友美かわうちさゆみさん、発売は2014年、展望社から。

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内容/あらすじとか

アニメ『まんが日本昔ばなし』の企画制作、プロデューサーを務めていた川内彩友美さんが、昔話の舞台となった様々な地域を訪ねる紀行エッセイ。

『まんが日本昔ばなし 今むかし』の感想/レビュー

表紙とタイトルから『まんが日本昔ばなし』についてあれこれ語った本だと思ってましたが、内容は紀行文でした。とはいえそれはただの旅行ではなく、「昔話の舞台の今」をテーマにした探求の旅。昔話がそれぞれの地域でなぜ生まれたのか、現在はどうなっていて、どんな形で残されているのかが解き明かされていきます。

昔話が今も根強く愛されている地域、観光地化して時代に合わせた形で存在している地域、地元の人にすら忘れ去られひっそりと痕跡を残すのみの地域。意識していなければ知らずに通り過ぎてしまうし、何もしなければ消えていくのが昔話だと思います。

それらをなぜ残す必要があるのか、なぜ守る必要があるのか。自分自身明確な答えを出せずにいますが、合理性を抜きにして昔話が好きだからということはハッキリ言えます。

 

静岡文化芸術大(浜松市中央区)の学生4人が、同市天竜区春野町に伝わる民話をまとめた「春野のむかし語り」を、三弥井書店(東京)から刊行した。1年間かけて地域住民からの聞き取り調査に取り組んだ学生は「記録に残さないと廃れてしまう話を伝えられたのは意味があった」と振り返る。

参照:春野の民話伝えたい 静岡文芸大の4人出版

静岡文化芸術大学では、学生が春野町(浜松市)の気田、砂川、大時、胡桃平地区などでフィールワークを行い、昔話を収集。本として出版しています。この試みは過去数年にわたって続いており、県内では書店、図書館にいけば彼女たちが作った本を手に取ることができます。

 

 豊川市篠束町の篠束神社は、どの集落にもある小さな神社だ。今春、大きな神社に負けないホームページを開設した。神社と地域をつなげるツールになればと、氏子たちが作った。(中略)昨年8月、一般氏子で農家の山内章裕さん(56)がホームページ開設を提案した。「昔は地域のよりどころが神社だったが、今は違ってきている。このまま形式的に祭礼などを続けていけば、いつか無用との議論が出る可能性がある。神社を残すためにも必要だと思った」と理由を話す。

参照:大きな神社に負けない 豊川・篠束神社のHP

愛知県豊川市では、2024年に小さな神社がホームページを開設したことが話題になっています。

篠束神社ホームページ

 

このように、放っておいたら消えかねないものを残そうと行動を起こす人たちは大勢います。逆に遠い昔に消えた昔話はたくさんあって、現代でも残っている昔話は文化を守ろうとする人たちの努力によって脈々と受け継がれてきた、いわば選りすぐりの精鋭です。そして少なくとも、『まんが日本昔ばなし』で作られた話は、どれだけ時間が経っても資料として残り続けるのでしょう。

昔話の灯火が消えそうになったのは今に始まったことではないし、ピンチなのはいつので時代でも同じ。それを危惧する声があるうちはその火が絶えることはない、はず。もちろん、自分も何かできる範囲で昔話や伝説の継承に役立つことをしていければと思いました。

『まんが日本昔ばなし 今むかし』のハイライト/印象に残った箇所

巨大な岩の塊を眺めているうちにふと、「ひょっとしたらおのぶの洗濯岩とはこの岩ではないだろうか、岩に洗濯物をぶつけて叩き洗いをしたのでは」という思いがかすめ、洗濯物を岩にぶつけてダイナミックに洗うおのぶの姿が浮かんだ。勝手な推測ほど楽しいものはない。自然が大きければ大きいほど、わたしたちもまた想像の翼を大きく広げたくなる(川内 2014:121)

「鬼からもらった力」の舞台である群馬県、清岸院にて。信仰や伝説の多くはこんな風に生まれたのかもしれません。ちなみに、この岩はおのぶの洗濯岩ではありませんでした笑

日本人の暮らしが便利になる一方で、親子や近隣の人間関係が急激に希薄になり始めたのを憂え、国の未来を背負う子どもたちに、人から人へと語り継がれた昔ばなしを知ってほしい。そこに脈々と流れる人としてあるべき姿を楽しく、笑いながら学んでほしいという願いを込めて『まんが日本昔ばなし』を世に送り出しました(川内 2014:250)

あとがきより。さらりと書いていますが、アニメを見れば1話1話、情熱を持って作っていたことが十分に伝わってきます。ので泣ける。

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