かんたがお宮にある大きな木の根っこの穴から落ちて訪れた国は、何ともへんてこな世界でした。そこの住人“もんもんびゃっこ”“しっかかもっかか”“おたからまんちん”とかんたは仲良しになり、時のたつのを忘れて遊び回ります。けれどもすでに夜。遊び疲れてねむった3人のそばで、心細くなったかんたが「おかあさん」と叫ぶと……躍動することばと絵が子どもたちを存分に楽しませてくれるファンタジーの絵本です。(「福音館書店」より)
今回紹介するのは絵本の『めっきらもっきらどおんどん』。
作家の長谷川摂子さん(作)、降矢ななさん(画)によって描かれ、1990年に発売されました。
不思議な世界で出会った不思議な三人組、きっとこんな友達が欲しくなる。
夢か本当か分からない、ゆえに想像力を刺激してくれる絵本。
長谷川摂子の作品をAmazonで探す
長谷川摂子の作品を楽天で探す
降矢ななの作品をAmazonで探す
降矢ななの作品を楽天で探す
『めっきらもっきらどおんどん』のあらすじ、内容
かんたは遊ぶ友達を探してお宮にやってきました。
しかし誰もいなかったので一人でうたを歌っていると、巨木の穴から不思議な声が聞こえてきます。
穴に吸い込まれて不思議な世界に来たかんたは、そこで三人の化物と出会いました。
かんたは彼らと仲良くなって一緒に遊びます。
散々遊んだ後に月を見ていたら、急に心細くなってきました。
「お・か・あ……」
その時にかんたが呟いた言葉は、偶然にも元の世界に帰るための合言葉。
かんたは元いたお宮へと帰っていきました。
『めっきらもっきらどおんどん』の3つのおすすめポイント
『めっきらもっきらどおんどん』のおすすめポイントは3つあります。
①絵に迫力がある
②三人組が魅力的
③三人組の遊びが面白そう
順に詳しく説明していきましょう。
①迫力あるイラスト
『めっきらもっきらどおんどん』の絵には迫力があります。
不思議な世界の幻想的でおどろおどろしい色使い。
穴に落っこちたり、縄跳びをしている時のダイナミックな構図。
三人が近づいてきた時の勢い、泣いたり笑ったりの豊富な表情パターン。
全体的に動きのある絵が多いので、読み聞かせにも向いていると思いました。
②三人組が魅力的
化物、妖怪、それとも神様?
かんたに近づいてきた三人組は、仲良くなれるタイプの不思議な存在。
しかし、楽しいだけでなく得体のしれない不気味さがあるのが彼らの魅力になっています。
特に怖いと感じたのは、かんたが元の世界に帰る言葉を言いかけたシーン。
三人がガバっと飛び起き上がりかんたの口を塞ぎにかかるのは、それまで仲良く遊んでいた姿とギャップがあって驚かされます。
③三人組の遊びが面白そう
『めっきらもっきらどおんどん』のクライマックスでもある、三人と遊ぶシーン。
いずれの遊びも夢があって、子どもでも大人でもワクワクさせられます。
空を飛べる風呂敷、月を跨ぐほど大きな縄跳び。
お宝交換でもらった「覗くと海が見える水晶」は本気で欲しいと思いました笑
最後のページには風呂敷と縄跳びと水晶が描かれているので、三人と遊んだのは夢ではなかった…?
『めっきらもっきらどおんどん』の感想
かんたの行った不思議な世界には楽しいことや夢のある遊びがありますが、少しの怖さと不気味さも共存しています。
たとえば、帰ろうとするかんたに三人がとびかかってくるシーンには色々と想像させられました。
まだまだ一緒に遊びたいから引き留めようとしたのか。
それとも帰すつもりがなかったから焦ったのか。
意図的に帰さないのは怖いし、無邪気な好奇心から帰さないのも怖いです。
どれだけ仲良くなっても彼らは人外の者、普通の人間とは感覚が異なっているのかもしれません。
もしもかんたが帰れなくなっていたら、これは神隠し事件になりますよね。
そう考えると、かんたが異界の物を食べたり持って帰ってきたり、そういうのって大丈夫なのかと心配になってきます。
個人的にお気に入りのシーンは、かんたが月を見て心細くなるところ。
月を見てふるさとを思い出したり、しんみりしてしまうのはかんたが人間だから。
3人はいつまでも遊んでいられるかもしれませんが、かんたには寂しいという気持ちが備わっているのです。
天の原 ふりさけ見れば 春日なる
三笠の山に 出でし月かも
意味:天を仰いではるか遠くを眺めれば、月が昇っている。あの月は奈良の春日にある、三笠山に昇っていたのと同じ月なのだなあ。
こちらは古今和歌集に収録されている歌。
中国(唐)に留学していた阿倍仲麻呂が故郷を思って作った歌で、「遠く離れた場所にいても同じ月を見ている」ということに着目する感性が美しいですね。
この歌のように、かんたの月を見て母を思う人間らしい感性がきっかけとなって元の世界に帰っていく結末は、よく出来ていると思いました。
コメント