かいじゅうの国をたずねよう。コルデコット賞を受賞し、世界中の子どもたちをひきつけてやまないセンダックの代表作。子どもの内面のドラマをみごとに描いて、今世紀最高の絵本と言われています。(「絵本ナビ」より)
今回紹介するのは翻訳絵本の『かいじゅうたちのいるところ』。
アメリカ出身の絵本作家モーリス・センダックさんよって1963年に描かれ、1975年に神宮輝夫さんが翻訳しました。
一人きりの時間を大切にしたくなる!
想像力をとことん遊ばせることができる絵本。
モーリス・センダックの作品をAmazonで探す
モーリス・センダックの作品を楽天で探す
『かいじゅうたちのいるところ』のあらすじ、内容
「この かいじゅう!」
ある晩に、いたずらのお仕置きで寝室に閉じ込められた少年マックス。
すると部屋の中に森や海が現れて、マックスは冒険の旅へと出発します。
かいじゅうの国に着いたマックスは、かいじゅうたちの王となり彼らと遊びます。
遊び疲れて寂しくなったマックスは、夕食の匂いに引かれるように寝室へと帰っていくのでした。
『かいじゅうたちのいるところ』の3つのおすすめポイント
『かいじゅうたちのいるところ』のおすすめポイントは3つあります。
①かいじゅうたちが怖い
②一人の時間を大切にしたくなる
③解釈・意味が大人と子どもで異なる
順に詳しく説明していきましょう。
①かいじゅうたちが怖い
センダックの絵は決して怖いわけではありません。
登場するかいじゅうたちもポップで暖かみがあります。
ただ、異様にでかい目とガバっとした口に、少しだけ不気味な印象を受けます。
ページが進むにつれて少しずつ絵が大きくなっていくのは、おそらくマックスの没頭具合とテンションの振れ幅。
余白が0になり、かいじゅうたちと遊びまわる見開きの3連続は大迫力!けどちょっと怖い!
かいじゅうは大人のメタファー?父親らしき人もいる…?
ポップだけどよく見ると怖くて、もっとよく見るとその正体が見えてくる。
巧みな構造になっています。
②一人の時間を大切にしたくなる
一人ぼっちになった時、想像力はフル回転します。
楽しいことやワクワクすることを考えたり、自分自身の内側へと潜ったり。
そのような時間は子どもにとっても大人にとっても、非常に大切だと思います。
本当の意味で一人になる時間が少なくなっている現代だからこそ、たまには人やデジタル機器から離れて一人になる時間を作ろうと思いました。
③解釈・意味が大人と子どもで異なる
『かいじゅうたちのいるところ』はメッセージ性や意味を求めるよりも、シンプルにページをめくる楽しみに没頭したい作品です。
しかし、あえて考えるなら、子どもの視点と大人の視点で違った解釈ができると思いました。
子どもの視点なら、不思議な世界に行ってかいじゅうと遊ぶ物語。
対して大人の視点では、母親の怒り方に余裕がある、夕飯を抜きにする気はなかった、かいじゅうの中に父親らしき人物がいる。
そういった点から、子どもの想像に付き合いながら暖かくその姿を見守るハートフルな物語になります。
『かいじゅうたちのいるところ』の感想
映画化されていて、作者も作品も非常に有名。
いわゆる名作と言われるタイトルを前にすると斜に構えてしまいがちですが、楽しく読むことができました。
現実か想像かはさておき、「不思議な世界を冒険してまた元の日常に帰ってくる」というストーリーはよくあるパターン。
日本の絵本だと「めっきらもっきらどおんどん」がよく似た構成になっていますね。

『かいじゅうたちのいるところ』で最もワクワクしたのは、寝室に木が生えてくるシーンでした。
日常と非日常の境目、冒険の入り口には、いつだってワクワク感と緊張感が漂っています。
古いタンスの引き出し、トンネルの向こう側、大きな木の根っこにある穴、などなど。
小さい頃から、そういった場所が異世界への入り口になっているんじゃないかとワクワクした経験は多々あります。
たくさんの物語に触れて刷り込まれていたからか、子どもとしての想像力が発揮されていたからか、どちらが先かは分かりません。
一つ言えるのは、身近なところに非日常への扉を想像していた人たちが、そのような物語を作ってきたということ。
その扉は、一人きりの時に想像力を働かせなければ気づけないのかもしれません。
コメント