クリームをよくふってバターを作ったり、せんたくをしたり、たきぎをはこんだり―あたらしいおかあさんのもとで、いろんなしごとをいいつけられるオーパル。けれども、オーパルの目は、自分をとりまく世界にむけて、大きくひらかれています。やさしく心をなぐさめてくれる木やどうぶつ、はなたち…。みんな、ともだちでした。紙のきれっぱしにかかれた小さなオーパルの日記に、バーバラ・クーニーが美しく、端正な絵をつけました。さあ、小さな女の子の心のとびらをひらいてみて下さい。どんな世界がみえますか?(カバー袖より)
今回紹介するのは絵本の『オーパルひとりぼっち』。
オーパル・ウィットリーさんが5~6歳の頃に書いていた日記を、ジェイン・ボルダンさんが編集、バーバラ・クーニーさんが絵を描いて絵本として出版。
1994年にやぎたよしこさんが翻訳しました。
逆境下で逞しく生きる少女に勇気をもらえる。
5歳の少女・オーパルが綴っていた日記に絵を付けて編集した絵本。
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『オーパルひとりぼっち』のあらすじ、内容
オーパルは両親を亡くして義理の家族と暮らしている5歳の少女。
義母からは「やっかいもの」と疎まれ、毎日たくさんの仕事を押し付けられています。
そんなオーパルの楽しみは、動物や植物とお話したり、近所の人たちと交流すること。
動物たちと遊び、花や風の声を聞いて、悲しいことがあると木のラファエルに話を聞いてもらいます。
近所に住む盲目の女の子とは想像遊びをして、水車小屋のそばに住む奥さんはオーパルにいつも優しくしてくれます。
そんな生活も唐突に終わりを迎え、次の街へと引っ越す日がやってきました。
大好きな友達たちとの悲しい別れ。
しかしオーパルは、どこにいっても本当のお父さんとお母さんが天国から見守っていてくれることを信じているのでした。
『オーパルひとりぼっち』の3つの見どころ
『オーパルひとりぼっち』の見どころは3つあります。
①5歳の少女が書いた日記
②バーバラ・クーニーの絵
③切なくも美しい物語
順に詳しく説明していきましょう。
①5歳の少女が書いた日記
「これは、わたしの5歳と6歳の頃の日記です。」
ーオーパル・ウィットリーオーパル,W(1994)『オーパルひとりぼっち』(やぎたよしこ 訳)33 ほるぷ出版
『オーパルひとりぼっち』はオーパルが5歳から6歳の頃に書いていた実際の日記です。
年端もいかない子供が覚えたての字で日記を書くことや、自分の気持ちを記録しておこうと考えたことには驚かされます。
日記に難しい言葉や表現は使われていませんが、動植物に向けられる暖かい眼差しと、本質を突いた素直な表現には心を打たれます。
②バーバラ・クーニーの絵
オーパルの日記が出版されたのは1920年代。
それから詩人のジェイン・ボルタンによって編集されて、絵本が出版されたのは1994年です。
本書の絵を描いているバーバラ・クーニーは、1940年代にオーパルの日記を読んでおり、かねてから挿絵を描きたいと思っていたそうです。
落ち着いた色で描かれた絵にはどこか寂しさが漂っており、オーパルの顔に笑顔はありません。
バーバラ・クーニーはオーパルの日記に書かれた「寂しさ」にフォーカスしていたようです。
個人的にお気に入りのシーンは、オーパルが夜の声を聞くために外に飛び出しているシーン。
まんまるの月と青のコントラストが幻想的できれいです。
それから友達だった木のラファエルが切られてしまったシーン。
画面の端に座り込みじっと木を眺めているオーパルの背中に滲む寂しさと悲しさ。
「ああ、ラファエル!」と絶句で終わっている日記も見ていて辛くなります。
③切なくも美しい物語
オーパルはひとりぼっちの寂しさや悲しみに向き合う方法を、自分なりに模索しています。
友達の動植物に偉人の名前をつけたり、本を読んだり、想像遊びをしたり。
自身の置かれた境遇に、心の豊かさで立ち向かっているのです。
その豊かで美しい感性は、孤独を紛らわす中で培われたものなんですね。
しかし、まだ5歳の少女がそんな現実に向き合わなければならなかったことに、やりきれない切なさを感じます。
『オーパルひとりぼっち』の感想
すごい感性、素敵な文章!
そんな風に感じる反面、オーパルの境遇を考えると複雑な気持ちにもなります。
これは結果的に見ればいいことだったのか、それとも可哀想なことなのか、安易に結論を出すことはできません。
ともかく、この境遇でなければ生まれなかった日記であることは間違いありません。
同時に、孤独の中でも楽しみを見つけ、寂しさや悲しみに対して心の豊かさで向き合うオーパルの逞しさに、勇気をもらいました。
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