『13歳からの地政学―カイゾクとの地球儀航海』を読みました。
著者は田中孝幸さん、発売は2022年、東洋経済新報社から。
内容/あらすじとか
「地政学」がわかれば、歴史問題の本質/ニュースの裏側/国同士のかけひき…が見えてくる!
高校生・中学生の兄妹と年齢不詳の男「カイゾク」との会話を通じて、
「地政学」が楽しくわかりやすく学べる一冊(Amazonより)
地政学とは地理的な条件をもとに、国家の政治や経済、軍事、社会的な動向を分析する学問。地理学と政治学を合成した言葉で、ジオポリティクス(geopolitics)とも呼ばれます。(AIによる概要より)
『13歳からの地政学―カイゾクとの地球儀航海』の感想/レビュー
国際情勢、歴史問題などを、小説形式でわかりやすく語った本。
地理的条件による幸不幸の話、アメリカが世界一の強国といえる理由、アフリカが貧困から抜け出せない理由、中国が南シナ海を欲する理由、韓国発の商品やコンテンツが世界でヒットする理由などなど。日頃ニュースなどで目にするけど、正直よくわからない話を丁寧に解説してくれます。
物事を色んな角度(相手の立場、歴史的背景、地理的条件など)から見ようとする姿勢。興味を持って、自分で調べてみることの大切さがわかりました。同時にあまりにも複雑に事情が絡み合っていて、戦争などの問題が容易に解決できない現実にも「そりゃあそうだよな」と納得してしまいました。しかし世界はより良い方向に向かっていくという希望も語られています。
『13歳からの地政学―カイゾクとの地球儀航海』のハイライト/印象に残った箇所
印象に残った箇所を引用しつつ紹介。
アメリカは打ち出の小づちを持っているようなもの
世界の貿易の8割で使われる通貨はドルだ。(中略)最も信用があるドルを外国が欲しがり、ドルなしでは貿易ができない。アメリカを大嫌いな国もテロリストも、ドルは欲しがっている。アメリカ人は世界中から物を輸入して買いまくっているが、破産しない。ちょっと乱暴な言い方をすれば、いくら物を買っても、ドルを刷って支払えばいいだけのことだからだ。打ち出の小づちを持っているようなものだ(田中 2022:27-28)
ドルに価値があるのは、アメリカが世界で最も強い国だから。強い国がその強さを活かして雪だるま式に強くなっていく構図は、個人にも当てはめられると思います。
外国語を学ぶメリット
外国語を勉強するということは、その国の言葉だけでなく、考え方や文化を知ることであり、それと比較して自分の国を理解することでもある。そうすれば話し合いや商売の場面で、自分の国の理屈を無理に押し付けたりしないだろう。大きな国の会社や政府は、それができないために失敗することも多い。いざという時に理にかなった良い判断ができなくなるんだよ。こういうことはアメリカ、中国、ロシア、日本など世界中の国で大なり小なり起こっている(田中 2022:142)
『銀河の片隅で科学夜話』では、人の認知機能は使う言語によって差異が出ることが判明していると紹介されています。つまり複数の言語を学ぶことは、自分の視野を広くするメリットがあるということです。
「安くて良い物」の真実
安くて良い物が生まれるのには、二つの力が働いている。一つは、技術を高めることだ。できるだけ余計な手間がかからない形で、たくさんの商品を作れるように効率化して、安くする。そしてもう一つは、できるだけ安く人を雇って使うこと。例えば服を作る繊維産業は、とても安い給料で働いてくれる人の力なしには成り立たなくなっている。日本にだって、悪い条件で奴隷のように働かせているケースもある(田中 2022:166)
儲からない仕事、大変な仕事は、立場の弱い人や外国人労働者に押し付けられているという話。あまりにも安くて良いものだったり、どこにもお金が生じていないようなサービスなどには必ず裏があるのかもしれません。
以前、骨なしのサバを食べていて、この骨はどうやって取り除いているのかと疑問に思ったことがありました。最初はなにか薬品などを使って骨だけ溶かしているのではないかと予想しました。しかし調べてみるとその実態は、外国人労働者に手作業で一本一本魚の骨抜きをさせていることがわかりました(作業中にほぐれた身は無味無臭の結着剤でかためて形を整えている)。
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