脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方|感想/レビュー

単行本・文庫本
当サイトはアフィリエイト広告を利用しています

脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方』Kindle版を読みました。

著者はジョンJ.レイティ/エリック・ヘイガーマン、訳は野中香方子さん、Kindle版は2014年にNHK出版から出ています。

運動すると気分がスッキリすることは誰でも知っています。けれどもなぜそうなるのかわかっている人はほとんどいません。本書は「運動と脳」の関係に神経科学の視点から初めてしっかりとメスを入れ、運動するとなぜ学習能力が上がるのか──のみならず、ストレス、不安、うつ、ADHD、依存症、ホルモン変化、加齢といった人間の生活・人生全般に影響を及ぼすのか、運動がいかに脳を鍛え、頭の働きを取り戻し、気持ちを上げるかを解き明かします(Amazonより)

開催中のAmazonキャンペーン

内容/あらすじとか

科学的なデータや論文から運動の効果を徹底解説した本。

免疫、心血管系の強化、肥満防止、注意力、集中力、ストレス耐性の強化、リラックス効果、脳の老化防止および細胞の若返りなど。

運動には挙げればきりがないくらいのメリットがあります。

感想、レビュー

運動習慣がない人にはもちろん、普段から運動している人にも超おすすめな内容でした。

運動が心身の健康にいいことは昔から言われていますが、近年の研究でさらなるポジティブな効果が次々と明らかになり、もはや運動しない理由が見つからないくらいになっていることが分かります。

 

ただ、運動嫌いな人にとっては「運動を始めること」が大きなハードルになっているのが悩ましいところ。

実際、運動を習慣化しようとした人の半分は、半年から一年以内に挫折するそうです。(野中 2014:位置NO 4944 Kindle版)

心身の問題、仕事や家庭などの時間的都合で運動を始められない、始めても続かないは大きな問題だと思います。

 

本書ではそういった問題にも切り込んでおり、運動習慣がない人がいきなり激しい運動をすると、運動の負荷が過剰なストレスになってしまうこと、運動によるリラックス効果がすぐには得られないことなどを指摘しています。

いきなり負荷の強い運動をすることを控える。

短時間の散歩でもやらないよりマシ、とにかく続けて運動習慣を作る。

誰かと一緒に取り組む。

たとえば上記のように、どうすれば運動を続けられるかを考えることが大切だそうです。

 

本書の内容は物語仕立てのエピソードが多いので楽しく読めますが、専門的な用語や脳科学の難しい話も多いです。

ページ数もそれなりにあるので、より手軽に運動の効果を知りたい人にはアンデシュ・ハンセンの『最強脳』を先に読むことをおすすめします。

最強脳『スマホ脳』ハンセン先生の特別授業|運動することであらゆる能力が向上する
コロナ禍で自宅時間が増え、大人も子供もスマホやパソコン、ゲームやSNSに費やす時間が増えていませんか?欧米では運動不足や睡眠不足、うつになる児童や若者の増加が問題になっています。記憶力や集中力の低下、成績悪化、心の病まで引き起こす、そんな毎...

印象に残った箇所

印象に残った箇所を引用しつつ紹介。

  1. 運動の恐るべき効果
  2. どんな運動をどれくらいの時間、どれくらいの頻度でやればいいのか
  3. 孤独でも運動効果は得られる?

①運動の恐るべき効果

  1. 心血管系の強化(血圧が下がり、体と脳の血管の負担低減)
  2. 燃料を調整(全身のインスリンが調整され脳卒中、アルツハイマーを防ぐ)
  3. 肥満防止(肥満は心血管、代謝系だけでなく脳にも悪影響を及ぼす)
  4. ストレスの閾値を上げる(慢性的なストレスにより傷ついた細胞の修復、うつ、認知症、老化防止)
  5. 気分を明るくする
  6. 免疫系の強化(がんの最も明らかな危険要因は運動不足、傷ついた組織を修復する細胞を活性化)
  7. 骨を強くする(骨粗しょう症防止)
  8. 意欲を高める(ドーパミン、ニューロンのつながりが強まりやる気、向上心が増す。動いていないと体は急速に死に向かう)
  9. ニューロンの可塑性を高める(有酸素運動は学習、記憶、高度な思考、感情コントロール能力を高める)

参照箇所:ジョンJ.レイティ/エリック・ヘイガーマン(2011)『脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方』(野中香方子 訳) 位置No.4435 NHK出版 Kindle版

②どんな運動をどれくらいの時間、どれくらいの頻度でやればいいのか

運動は具体的にどれくらい、どんな運動をすればいいのでしょうか

これに対して著者は「個人差があるので、はっきりと決まった答えはない」としつつ、以下のように説明しています。

トリヴェディとダンは、公衆衛生のガイドラインを基準にして「高用量」の運動としては、ほぼ毎日、中程度の有酸素運動を三〇分間つづけることを勧めている。体重が一五〇ポンド(六七・五キロ)の人なら、中程度の運動を週に三時間することになる。「低用量」は、同じ運動を週八〇分するのに相当する(野中 2014:位置No.2678 Kindle版)

中程度の有酸素運動30分を毎日。

「有酸素運動」はウォーキング、ランニング、自転車、水泳など心肺機能に負荷をかける運動。

「中程度」はあいまいですが、きついと感じない程度の運動(軽いジョギングくらい)。

「用量」は体重あたりの消費カロリーを示す運動の単位、体重(ポンド)×8で週に必要な消費カロリー(高用量の運動)を割り出せます。

キログラム計算にするなら、体重×2.2×8でだいたいの高用量が出ます。

例 体重60キロ×2.2×8=1056、週に1056カロリーくらい消費する運動が必要

ランニングマシンを30分やった消費カロリーが200くらいだとすれば、週に5、6回やっとけばOK、という感じ。

だいたいの人は週/1000~1500前後に収まりそうなので、ジョギングくらいの運動を毎日30分、走るのがイヤなら少しきついくらいの早歩きでも代用できるんじゃないでしょうか。

③孤独でも運動効果は得られる?

運動そのものがストレス要員であり、HPA軸を活性化させ、コルチゾールを増やす可能性があることを思い出してほしい。孤独な状況も同じだ。ラットはランニングでストレスがたまり、加えて孤独のせいもあって、ニューロン新生を妨げるほどコルチゾールが増えたのだろう。そうなったのは、おそらくラットが十分な回復期間を与えられなかったからだ。なお悪いことに、当初、ラットはまったく運動していなかったので、いきなり一日に数キロ走るというのは、体のシステムが初めて経験する大きなストレスだった(野中 2014:位置No.4999 Kindle版)

プリンストン大学で、動物が単独で生活している場合とグループで生活している場合で、運動の影響がどう違ってくるかを調べる実験が行われました。

その結果、グループで生活しているラットにはニューロンの新生が認められ、孤独なラットは運動していないラットと同じくらいニューロン新生が少なかったそうです。

しかし、実験日数を伸ばしていくと、孤独なラットのニューロン新生の速度はグループで生活しているラットたちに追いつきました。

孤独のストレスや運動自体のストレスはニューロン新生を妨げますが、運動を続けることで体のシステムの調整が進み、運動の影響をうまく利用できるようになったようです。

 

人とラットは違いますが、一人で運動することが多い自分には希望のある話。

孤独でも運動すればポジティブな効果が得られるよになる。

誰かと一緒に取り組めばより早く効果を得られるし、何より楽しい。

覚えておきたい話です。

その他ハイライト/付箋した箇所

おとなになって、教師や医者を前にして、運動は気分や注意力、自信、社会性にプラスの影響を及ぼしますと講演するようになっても、体育がその手段になるとは思いもしなかった。わたしの経験では、体育は運動をするものではなく、むしろ逆に運動する気をなくさせるものだった。内気な子や不器用な子、病弱な子ーーつまり、運動の効果を最も得られるはずの子どもたちーーが押しのけられ、ベンチでほかの子の活躍を眺めているなんて、なんと残酷な皮肉だろう(野中 2014:位置No.646 Kindle版)

↑体育で運動が嫌いになった、運動=苦しくて辛いものというイメージが出来上がったという人はかなり多いのではないでしょうか。

苦手意識や拒否反応で運動へのストレスが大きくなれば、運動で得られるメリットも少なくなるし、その後の生活で運動習慣を作ろうとは考えないでしょう。

ここまでくれば、運動が三つのレベルで学習を助けていることは十分おわかりいただけたと思う。まず、気持ちがよくなり、頭がすっきりし、注意力が高まり、やる気が出てくる。つぎに新しい情報を記録する細胞レベルでの基盤としてニューロンどうしの結びつきを準備し、促進する。そして三つ目に、海馬の幹細胞から新しいニューロンが成長するのを促す(野中 2014:位置No.1061 Kindle版)

現代生活のストレスをいかに減らすかを説くさまざまなアドバイスが見失っているのは、人間は困難があればこそ努力し、成長し、学ぶという点だ。細胞レベルでもそれは同じで、ストレスは脳の成長に拍車をかける。ストレスがそれほど過酷なものでなく、ニューロンが回復する時間があれば、その結びつきが強くなり、わたしたちの心の機械はよりスムーズに動くようになる。よいか悪いかの問題ではない。ストレスは必要不可欠なものなのだ(野中 2014:位置No.1214 Kindle版)

↑体の成長にストレス(負荷)が必要なように、脳の成長にもストレスが必要。

ただし過度のストレス、慢性的なストレスは心身を蝕むので逆効果。

何事もほどほどがいいということでしょうか。

現代人はかつての人類よりずっと生き延びやすくなったのに、むしろより強いストレスを感じがちだという進化のパラドックスにすべては帰着する。祖先と比べてほとんど体を動かしていないことが、その矛盾をますます深刻なものにする。ストレスが多ければ多いほど、脳をスムーズに活動させるには体を動かすが必要があるということを、ぜひ覚えておいてほしい(野中 2014:位置No.1663 Kindle版)

↑ストレスが多いときほど、運動することが大切。

ある意味、運動は治療としてより予防としての方がはるかに重要だ(野中 2014:位置No.2705 Kindle版)

↑心身を病んでからでは「運動を始める」ことが大きなハードルになってしまう。

健康で元気なうちに運動習慣を作る方が簡単。

コメント

タイトルとURLをコピーしました