「どんな服を着たらいいのか、わからない」.「どうせ自分なんか、何を着たって似合わないし……」.ファッションにたいして、そんな悩みや苦手意識をもっていませんか?この本は、あなたと一緒に「服と仲良くなる方法」を考えていく本です.自分らしい服を着て、自分らしく生きる.読み終わるころにはきっと、新しい自分がはじまります.
高村是州 (2010) 『ファッション・ライフのはじめ方』裏表紙 岩波書店
今回紹介するのは岩波ジュニア新書の『ファッション・ライフのはじめ方』。
著者はイラスレーターで教授の高村是州さん、2010年に発売されました。
ファッションを通して自分自身を知り、社会との関わり方を学べる!
中高生男子向けのファッション入門書。
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『ファッション・ライフのはじめ方』のあらすじ、内容
ファッションは自分がどんな人物なのかを伝える「無言の自己紹介」です。
ファッションが気になりだすということは、他者の目を意識しているということ。
それは自我の目覚めであり、社会と関わるということでもあります。
1章では「ファッションとは?」「オシャレとは?」「カッコいいとは?」といった疑問を、一問一答形式で簡潔にまとめています。
ファッションで役立つ知識から、歴史、小ネタ、面白話まで、その内容はざっくばらんです。
2章はファッションの基礎的な話。
まずは人のマネから始めること、スタイリング(全体のシルエット)はサイズ感が大切。
そういった具体的なアドバイスから流行、ブランドについての考え方などが中心となります。
3章ではファッションを楽しみながら自分らしさを見つける方法を考えていきます。
・ファッションは自分の内面を反映させるので、自分の正直な気持ちに向き合う必要がある
・「選ぶ」ことは「迷う」ことなので大変だけど、人を選び人に選ばれるうえでのファッションが与える影響は大きい
・ファッションの根底は「好奇心」なので、完成やゴールはなく、試行錯誤しながら進化させていく
こういったマインド面の話が中心ですが、流行に左右されずに長く使える便利&鉄板アイテムなども紹介されています。
『ファッション・ライフのはじめ方』で学んだ3つのポイント
『ファッション・ライフのはじめ方』で学んだポイントは3つあります。
①ファッションへの苦手意識の発端は「わからない」
②ファッションは自分と社会に向き合うこと
③「百考は一動に如かず」
順に詳しく説明していきましょう。
①ファッションへの苦手意識の発端は「わからない」
僕は長い間、ファッションに対して苦手意識がありました。
その原因として一番に挙げられるのは「わからない」です。
どんな服を着ればいいのかわからない。
何がオシャレなのかわからない。
どうすれば改善できるのかわからない。
わからないから避けて、避けることでコンプレックスが強くなりました。
周りの人がみんなオシャレに見えて、自分がみすぼらしくダサいように感じられました。
当時はネット上で「服を買いにいく服がない」なんてネタがありましたが、本当にその状態に陥っていたのは僕だけではなかったと思います。
本書ではそんな「わからない」を様々な角度から紐解いてくれます。
読んでいきなり状況が改善されるわけではないけど、「ファッションを楽しみたい、学びたい」という気持ちにさせられます。
ファッションの具体的なノウハウを教えている本はあっても、ここまで丁寧にマインドの話をしている本は少ないと思いました。
②ファッションは自分と社会に向き合うこと
本書の「はじめに」では、自分の臆病な心理をいきなり見透かされたように感じました。
「ファッションは無言の自己紹介」というキラーワードにもギクリ。
よく「人は中身だ!」なんて言いますが、実際には「人は見た目が9割」という厳しい現実があります。
「ファッションはわからないし興味もない」と避けることは簡単ですが、そこに向き合わないなら見た目で損をし続けても文句は言えないんですね。
服を着て生活する以上、人はファッションから逃れられません。
自分の内面をファッションに反映させることも、向き合わずに無難を目指そうとすることも、自分の心理を端的に表してしまいます。
自分自身のことを知るためにも、社会での居心地をよくするためにも、ファッションは重要な役割を担っているのです。
③「百考は一動に如かず」
頭であれこれ考えるよりも、実際に外に出て人を見て、服を買って着てみること。
行動を起こして、失敗を通してしかファッションのレベルは上がらないと著者は述べます。
今でこそ、具体的なノウハウや脱初心者の情報は簡単に手に入れられますが、自分に合った服や好みのスタイルは実践を通してしか見えてきません。
だから、勇気を出して行動すること。
これはどんなことにでも言える共通した真理だと思います。
『ファッション・ライフのはじめ方』の感想
ファッションのテクニックというよりは、ファッションとの向き合い方や心構えを教えてくれる本でした。
ファッションに苦手意識のある人が読めば「マインドの話はどうでもいいから、手っ取り早くオシャレになれる方法を教えてくれよ」と思うかもしれません。
しかし、本書を読めばファッションは外見を取り繕うだけではないことが理解できます。
ファッションとは自分自身を理解して、他者と関わり合いながら生きていくために役立つツール。
まずこの視点がないと、ファッションに対する苦手意識や抵抗がいつまでも消えないと思います(何より自分が社会で生きにくなります)。
それは単なる綺麗事ではなく「人は見た目で判断される」、「他人が見た自分が社会での自分」といった世知辛い真実をバックボーンにした考え方です。
ファッションを意識することは、自分を成長させることでもあり、自分を守ることでもあるんですね。
そんな本書の内容は、ある程度ファッションに親しんでいる人なら当たり前のことばかりかもしれません。
対象はファッションに興味が出てくるくらいの中高生男子なので、当然といえば当然です。
しかし、その時期にファッションに無頓着だった人への救済措置として、もっと成長したい人には勉強本として一読の価値があると思いました。
多くの人は、ファッションを学生時代の友達との遊びや異性との付き合いの中で自然と学んでいきます。
が、それができなかった、そこに入ろうとしなかった、不器用だったり自意識過剰な人がたくさんいるのも事実です。
実際に学生時代にファッションに苦手意識のあった自分からすれば、本書の内容は中学の授業で教えてもらいたかったです。
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