ファッション・ライフの楽しみ方|ファッションを楽しむことで「創造性」を育む

ファッションライフの楽しみ方岩波ジュニア新書
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ファッションにはオンとオフの2つのスイッチがある.オンに挑戦すると学校生活が前向きになる.オフを充実させると放課後の楽しみが増える.時と場所に応じてスイッチを切り替え、ちょっと大人な自分になってみよう.部屋着からスーツまで.高校生からのメンズスタイル.『ファッション・ライフのはじめ方』のステップアップ編.

高村是州 (2015) 『ファッション・ライフの楽しみ方』裏表紙 岩波書店

今回紹介するのは岩波ジュニア新書の『ファッション・ライフの楽しみ方』。

著者はイラストレーターで教授の高村是州ぜしゅうさん。

『ファション・ライフのはじめ方』の続編として、2015年に発売されました。

ファッション・ライフのはじめ方|ファッションの攻略は社会での生きやすさに直結する
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『ファッション・ライフの楽しみ方』はどんな本?
正しい知識や基本を知ることで、ファッションのレベルをもう一段上げられる!
ファッションの歴史や正しい知識を楽しみながら学べる男子学生向けの本。

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『ファッション・ライフの楽しみ方』のあらすじ、内容

前作はファッションとの向き合い方や心構えの話が中心でした。

対して今作では、服の着こなしやスタイルといった、より具体的な方向に踏み込んだ内容になっています。

メンズファッションの定番アイテムの各部名称や成り立ち、着こなし方。

メンズファッションの型(スタイル)の紹介と歴史。

ファッションを自分と社会を繋ぐツールとして考えることの重要性。

著者の思想と正しい知識を織り交ぜた具体的なアドバイスが豊富に散りばめられています。

 

1章はオフ・ファッションとして部屋着の着こなしを見直します。

2章では学生向けの制服(主にブレザー)について。

3章は外に出かける時のファッションについて。

4章はスーツに関する話が中心となります。

『ファッション・ライフの楽しみ方』で学んだ3つのポイント

『ファッション・ライフの楽しみ方』で学んだポイントは3つあります。

①想像×行動が「創造」を生み出す
②ファッションの型(スタイル)が学べる

③ファッションで社会を学べる

順に詳しく説明していきましょう。

①想像×行動が「創造」を生み出す

正直に言えば、ファッションはめんどくさいです。

買った服はどんどん劣化していくし、流行はすごいスピードで変わっていきます。

毎日着る服を選ぶのは大変だし、お金も時間も飛んでいきます。

手持ちの服を極限まで減らしたり、着る服を固定したり、ミニマリスト的な考え方が流行るのは選択のストレスを減らすためでしょう。

 

しかし、著者はそのめんどくさいファッションを楽しむことをオススメしています。

自分で想像して、自分で選んで、自分で判断して、人前に出る。

あらゆることで選択肢が増えた現代では効率性が重視され、「めんどくさい」は敬遠されがちです。

しかし、めんどくさい行動をすることで本当の意味で理解できることや、新たに閃くことがたくさんあるのも事実なのです。

これだけ選択肢が多い現代社会の中で、わざわざめんどくさいことをする意味を見つけるのは難しいことだと思います。…(中略)…でも、そのめんどくさいことをやってみようと思う「行動」が、「創造」を生み出す原動力のひとつである「個性」を育てます。

(高村 2015: 195)

②ファッションの型(スタイル)が学べる

ファッションにはある程度決まった型(スタイル)があって、それらは大きく分けて4つに分類できます。

①トラッド
②ロック
③フォークロア
④カジュアル

本書ではそれら4つのスタイルについて、詳しく解説されています。

 

スタイルの歴史やそこに込められた思想は、普通に服を着るうえで必ずしも必要な知識ではありません。

しかし、スタイルについて学ぶことは、自分なりのスタイルを形成していくうえで大きなヒントになります(それもまた「めんどくさい」行動の1つですよね)。

「なぜそのスタイルが生まれたのか?」

その理由の中に共感できるところがあったら、そのスタイルに親近感が湧いてきますよね。その親近感は、みなさんがこれまでの人生のなかで培ってきた「感性」です。

それが「センス」なんです。

(高村 2015: 139)

 

また、各スタイルの変遷がイラストで描かれた巻末付録は特に見応えがあります。

参考となるブランド、アイテム、有名人、映画、音楽まで網羅的に紹介されているので、さらに知識を深堀りしたい人には垂涎すいぜんの付録と言えるでしょう。

学生向けとはいえ本書を万人にオススメできるのは、こういった部分までカバーされているからです。

③ファッションで社会を学べる

著者はファッションを学ぶことで一人ひとり違うということが分かったと述べます。

たとえば同じ制服を着ていても一人ひとり着こなしやデザインが異なります。

ファッションを学ぶ前は同じに見えていた服装が、ファッションを学ぶことで「同じものは何一つない」ということに気づいたんですね。

人を一人ひとり区別して認識することで、「多様性」と「共存」を体現することができるのだそうです。

人は、それぞれの人生の目的に沿って服を着ています。その人のそのときの目的がわからないかぎり、その人の見た目だけで判断はできません。その人なりの理由があるからです。そう考えて人を見ると、ファッションそのものでなく、むしろ身を包んでいる服の奥に隠された、その人の内面を見つめられるようになります。

(高村 2015: 197)

 

人は見た目で判断されるものだけど、ファッションを学べば見た目から内面を探ろうとする働きが生まれます。

それは相手を理解しようとすることであり、多様性を認めることです。

外見を意識することで内面の大切さに意識が向かうという矛盾は、非常に面白いと思いました。

『ファッション・ライフの楽しみ方』の感想

「高校生からのメンズスタイル」

帯にそう書かれているだけあって、本書は学生向けの内容になっています。

制服の着こなしについての章は、社会人には退屈かもしれません(ブレザー系ジャケットを着る時には役立つかもしれませんが)。

 

しかし、途中で詳しく語られているファッションの型(スタイル)に関しては、自分の好みを探るうえで大いに役立つし、単純に読んでいて面白かったです。

そして前にも書きましたが、巻末付録のスタイル変遷の図解は必見。

持っていれば何かと役に立つので、このために本書を買っても損はしないかと思います。

前作に続き本書もまた、学校の授業でぜひ扱ってほしい内容でした。

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