おとぎ話のやたら残酷な展開について考察した本を読んだ|『おとぎ話はなぜ残酷でハッピーエンドなのか』感想・レビュー

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おとぎ話はなぜ残酷でハッピーエンドなのか』を読みました。

著者はウェルズ恵子さん、発売は2024年、岩波書店から。

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内容/あらすじとか

人間ではない恋人,「話すな」の掟,開けてはいけない部屋――この世の暗さが圧倒的だったむかしむかしの時代,人々が夢みて語り継いだ物語が,アニメやゲームのモチーフになって現在も生き続けています.幸せな人が幸せを求めて旅に出るでしょうか.なぜおとぎ話はあり,私たちに何を語るのか――その深層に触れてみませんか.

ウェルズ恵子(2024)『おとぎ話はなぜ残酷でハッピーエンドなのか』裏表紙 岩波書店

『おとぎ話はなぜ残酷でハッピーエンドなのか』の感想/レビュー

本書は主に西洋のおとぎ話を扱っています。

おとぎ話に共通している話のパターン、ルールなどは一体何を伝えようとしているのでしょうか。そのお話が作られた時代の状況や価値観などに照らしながら考察を行い、現代の漫画やアニメ作品に残されている痕跡にも触れています。

  • 昔話内での残酷な現実:世界の不合理(差別、貧富の差、戦争、病気)が直接的、もしくはメタファーとして描かれる
  • 現実との向き合い方:登場人物たちが苦難や理不尽にどう対応したのかが描かれる
  • 幸福になるための条件:幸せになるにはどうすればいいのかの示唆に富んでいる

権力や暴力によって理不尽に虐げられてきた人々が、現実をどう解釈し、どのように幸せになろうとしたのか。

物語の作者(あるいは語り継いで来た人々)ですら、自由な表現ができずに権力に忖度する必要があったこと。結婚 ≒ 幸せがハッピーエンドとして描かれがちなのは、暴力、死、差別が今よりずっと身近に多く存在していたから。権力者や強い男性の庇護下に入ることで身の安全を確保することが幸せのシンプルな答えだったという部分がおもしろかったです。

『おとぎ話はなぜ残酷でハッピーエンドなのか』のハイライト/印象に残った箇所

やたらと残酷な展開があるのはなぜか?

おとぎ話は暴力のメタファー(たとえ・比喩・暗喩)に満ちています。現実世界が暴力に満ちているからでしょう。物語はその現実を写し、どう対処するかを伝えようとしています。そこに物語のエッセンス(存在意義)があります。物語が示す暴力の性質を見抜くことは、皆さんが現実世界のしんどさを整理し理解する助けとなるでしょう(ウェルズ 2024:5)

たとえば昔話でよくある、覚めない眠りについた、喋れなくなった、姿を変えられたなどの苦難があります。それは本当のことを語れない、自分の意見を主張できない、黙って我慢するしかないというカーストや宗教的な差別、暴力的な圧力などを暗示しているそうです。

悪者の女性が多く出てくるのはなぜか?

女性同士が対立するシナリオは、受け入れ難い要求を力で押し付けてくる権力者(王や家長など)の行為が悪であるとは表現できないので、工夫した結果だと想像できます。権力者は、フィクションの中でさえ語りを制限するほどの権力を持っているのです。(中略)こう見てくると、おとぎ話で悪役を振られる人間もまた、社会の弱者(差別される側)だとわかります。物語の語り手だった人の多くは、自らも種々の権威に怯えながら生きていました(ウェルズ 2024:128-129)

いじわるな継母、姉、魔女などが出てきて、父親は極端に影が薄かったり、善人もしくは罪がないように描かれる話が多いのはなぜなのか。それは家内での権力者である父や、王様であった男性を悪者にすることができなかったからという難しい話です。

空想的な展開はすべからく美しい

私たちが「ロマンチック」だと感じるのはいつかというと、非現実の美しさが開かれる時です。(中略)姿を見せない夫キューピッドを禁を破って見てしまったプシケーが、彼に愛されたいという情熱だけで異世界を遍歴する苦難も、蟻や葦や鷲が彼女を助ける奇跡も、高い塔が死の淵から彼女を救うことも、物語に非現実さが積み重なるほどに美しく、不思議に説得力を増します。その頂点でキューピッドとプシケーの再開と結婚がカタルシスをもたらし、ロマンチックな天上のキラキラがあふれます。人の心は、美を求めて空想するものなのですね(ウェルズ 2024:184)

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