『答えは本の中に隠れている』を読みました。
著者は岩波ジュニア新書編集部、発売は2019年、岩波書店から。
内容/あらすじとか
「毎日、楽しく生きたい!」「好きなことだけしたい!」のに、友達や恋愛、部活のこと、進路や将来のこと等々、悩みや迷いが尽きない中学・高校時代。そんな人たちに、「人生の回答書」を授けます。学校現場や、相談窓口で10代に寄り添う12人がテーマ別に紹介する本には、答えだけでなく希望や生きる上でのヒントもいっぱいです!
岩波ジュニア新書編集部(2019)『答えは本の中に隠れている』裏表紙 岩波書店
アイデンティティ、ジェンダー、恋愛、部活、進路など、10代はとかく深く悩みがちな時期。本書はそんな10代の悩みに沿って、本、人、言葉とのかかわりが深いゲストたちがオススメ本を紹介した本となっています。
『答えは本の中に隠れている』の感想/レビュー
悩みはそのことだけ考えていても解決しないことが多いです。それでも悶々と悩んでしまうし、答えが出ないから苦しい状況が続いてしまいます。これは10代……に限らず大人になってもありがちな状態ではないでしょうか。
一二人の方が取り上げている本は、実にさまざまです。ジャンルも色々です。つい最近のものから、少し前のものもあれば、はるか昔のものもあります。それだけに、あなたの悩みに瞬時に効くアドバイスが書いている頁や本もあれば、今のあなたには何の力にもならないものもあるかもしれません。(中略)悩みは、それだけを考えていても解決策が見つからないことのほうが多いのです。まずは大きく息を吸って、吐いて、そしてじっくりと本と向かい合ってみてはどうでしょう(岩波ジュニア新書編集部 2019:ⅳ)
さんざん悩んで苦しんだなら、一度あえて遠回りしてみる、まったく関係ないことをしてみる。そうすることで糸口が見えてきたりするものですが、頭でわかっていてもなかなかできないもの。本書は似たような悩みに苦しんできた先達方が、悩みに効く本を紹介してくれています。
紹介されている本で悩みが解決すればよし、しなくても無駄にはなりません。多読で得られる視点や学び、想像力が自身を省みる鏡となるからです。
しかるべき時にしかるべき本に出会えるのは幸福。しかし選択肢が多すぎて何を読めばいいか迷うのは、誰もが一度は抱える悩みでしょう。本書はそんな人への良質なブックガイドとなります。
『答えは本の中に隠れている』のハイライト/印象に残った箇所
人生を作るのは季節の移り変わり、散歩、コーヒー、雑談
物語に大事なのは日常です。季節の移り変わり、散歩、コーヒー、他愛のない雑談が物語の面白さを作ります。人生も同じです。本人の性格や、結婚するかしないか、就職するかしないかなんてどうでもよく、季節の移り変わり、散歩、コーヒー、他愛のない雑談が人生の面白さを作ります(岩波ジュニア新書編集部 2019:26)
山崎ナオコーラさんの章より。そんなことないだろ!と思いながらも、さらっとしてオシャレでカッコいい考え方だと納得させられた箇所。
実際のところ、人生において大部分を占めているのは、他愛のない日常の時間です。結婚、就職、受験など、劇的なイベントは一瞬の出来事で、しなければいけないイベントでもありません。それでいてそれらのイベントは、他愛のない日常の積み重ねの中からしか生まれないし作れない。そう考えると、大切にすべきは他愛のない日常なのかもしれません。
努力とか成長とか、挑戦とか、何かを成すとか、人生をシリアスに考え過ぎて切羽詰まっているようなときに見るとホッとするような考え方です。
自分を知るためには、多様な学びの場で多様な他者と出会うのがよい
性格は鏡に映らないから、自分の個性は自分自身が実はいちばんわかりづらい。大人ですらそうなのです。(中略)しかし多様な人々と向き合う中でそんな個性に気づくヒントを得られるのです。そのためには、「学びの場」が「多様である」こと、「他人と出会い、たがいを尊重しあえるような環境は必要不可欠」(岩波ジュニア新書編集部 2019:94)
学校と家以外にも居場所を作ること、作れること。色んな環境で色んな人と交流するのはそれだけで、多様な学びとなると思います。そして多様な他者を知ることで、おのずと自分がどんな人間かが見えてくるというわけです。
学生時代は閉じた世界に引きこもり、大人になると人と疎遠になって新しい出会いが減っていく。大人にも大切な考え方だと思います。
読書で得られる知識、想像力、語る力について
たくさんの優れた文章を読むと、語彙力が増えます。知っている言葉が増えると多彩な事柄が表現できるようになります。表現するということは、単に話したり書いたりするということだけではなく、「考える」ということにつながります。(中略)一昔前は、人間は、何か頭の中に考えが浮かんでから、それを言葉に変換して表現している生き物だと言われてきました。現代の脳生理学の世界では逆で、先に言葉があってから考えが生まれるということが指摘されています。(岩波ジュニア新書編集部 2019:185)
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