『これからの森林学入門』を読みました。
著者は太田祐子さん、杉浦克明さん、園原和夏さん、松倉君予さん、発売は2025年、朝倉書店から。
内容/あらすじとか
さまざまな側面をもつ森林について学ぶ森林学の入門書。森と私たちのかかわりを豊富な図版と写真を交えてわかりやすく説明します。〔内容〕森は生きている:森林エコシステムのしくみ/森に守られる:森林と環境/森を育てる:サステナブルな森の活用/森とつながる:森林サービスの可能性/これからの森の可能性(Amazonより)
『これからの森林学入門』の感想/レビュー
教科書的に一冊まるごと森林学を解説した本。
森林は気候変動、自然災害、エネルギー問題、生物多様性といった問題の解決・緩和の鍵となる重要資源です。国土の7割が森林という森林大国の日本で、なぜ近年は上記の問題に苦しんでいるのでしょうか。全国的に鹿が増えすぎていることや、熊が人里におりてきてしまうこと、土砂災害や台風被害による冠水などの原因に触れながら、なぜ森林が大切であるか、なぜ今の森林がうまく機能していないのかが説明されていきます。
森林は多種多様な動植物が非常に繊細なバランスで支え合って成り立っています。それゆえにわずかな変化や人の手が入ることでドミノ倒しにすべてが崩壊していきます。とくに自然は一度壊してしまうと元に戻すのが難しいそうです。百年単位で見なければいけなかったり、もう元に戻せないということになりうることを忘れてはいけないと思いました。自然からのしっぺ返しはすでに始まっているようです。
『これからの森林学入門』のハイライト/印象に残った箇所
葉はなぜ枯れ落ちるのか?
樹木は光合成でエネルギーをつくりだすために、葉から気体や水分の吸収と排出を行います。しかし、冬場は日照時間が短く、光合成の効率が落ちます。そのため、寒冷な地域では厳しい冬を迎える前に栄養を葉から幹に移動させてから落葉し、葉を維持するエネルギーを節約します。このとき、光合成を行うための緑色の色素(クロロフィル)が分解されるので、葉が赤や黄色に変わるのです。(太田 他 2025:11)
中学の理科で習うことでしょうか? しかし自分は「なぜ葉っぱが紅葉するのか、なぜ枯れるのか」と考えたときに上手く説明できなかったので、この説明がためになりました。
逆に杉のような常緑樹はなぜ一年中葉をつけているのか。それは杉(針葉樹)の葉が寒さや乾燥に強く、冬場でも多少は光合成を行えるからとのことでした。
森林総面積が広くてもダメ?
樹木の大量伐採が森林生態系に大きな影響を与えることは、容易に想像がつくと思います。しかし、たとえ小規模な開発でも森林の生きものへの影響が大きいことはあまり知られていないのではないでしょうか。例えば、森林を半分に分断するように道路が通ると、道路に面する森林の端(林縁)は明るく乾燥しやすくなるなど、生きものの生息環境は大きく変化します。また森林の総面積は大きく減少しなかったとしても、連続した森林の面積は狭くなり、動物にとって餌場にたどり着けなくなる、道路に出て命を落とすリスクが高まるなどの不利益が生じます(太田 他 2025:29-30)
意外なことに、戦後から現代までの日本の森林面積はそれほど変わっていないそうです。むしろ資源として使える木材は増えているくらいなのだとか。
それでもわずかな変化が生態系に多大な悪影響を及ぼしているというのは驚きの事実です。動物からすれば、山が分断されて行き来ができなくなれば、単純に餌場が半分になります。トンネルを通して水源を潰してしまえば、川は枯れて下流域の人にまで多大な影響が出ます。「森は破壊しませんから」は本質的な問題を隠す詐欺口上になっているかもしれません(当人にすらその意思はないでしょうが)。
人工林は手入れが必須
間伐は樹木の成長に合わせて本数を間引く作業のことです。元来、樹木を間引くことで幹の直径の成長を促進させ、年輪幅の整った利用価値の高い木材を生産するために行われてきました。近年では、木材生産のためだけでなく環境保全のためにも必要とされています。例えば、しっかり成長することで病虫害に対する抵抗性が向上し、炭素吸収源として貢献できるようになります。(中略)間伐の効果は樹木に対してだけではありません。間伐をしないと、林内に光が届かず暗い森となるため、下層植生はほとんど生えなくなります。しかし、間伐をすると臨床まで明るい光が届くようになり、林内の光環境が改善されます。すると、林床に草本や背の低い灌木などの下層植生が土壌を被覆することで表土の攪乱や流出を防ぎます(太田 他 2025:67)
日本の人工林はそのほとんどが、木材としての杉やヒノキで構成されています。それらは人が入る隙間がないくらい異様なほど狭い感覚で植えられています。これにより森は終日暗くなり、土壌にあるのは枯れ積もった針葉樹の枝葉だけ。森林面積は広くても生物多様性がなく、下層植生や土壌が死んでいれば、その恩恵はほとんど得られないと言ってもいいでしょう。
杉は地中深くに根を張りますが、土壌の深層部分にまでは届きません。それため近年に頻発しているような豪雨では深層部まで水が入ってしまい、深層崩壊(土砂崩れ)が起きます。
また下層植生がないことも、土壌の保水機能を失う原因にもなっているそうです。下層植生が繁茂すれば土の粒子同士の隙間が多くなり、ふかふかの土壌が水をたっぷり吸収してくれます:水源かん養機能(土壌が貯水してゆっくり河川へ供給する機能、水質改善や洪水の緩和に役立つ)。




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